Dropboxなどの汎用的なオンラインストレージサービスにおける、音楽や動画などの著作物の利用を、著作権法上の「私的複製」の範囲に含めるべきかといった点が検討されているそうです。
オンラインストレージサービス、ログインして使用するので、そこのデータの利用は、”私的複製の範囲”では? と考えがちです。
しかし、このサービスには、他人との共有機能があり、個人で自由に共有設定が可能なので、”私的複製の範囲”を越えて利用することも容易です。この為、この問題は、なかなか複雑で、著作権分科会で検討されています。
オンラインストレージは私的複製の範囲内? 著作権分科会小委での議論はまとまらず
-INTERNET Watch
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/event/20141128_678086.html
議論の結論としては、共有機能のないオンラインストレージサービスについては私的複製の範囲内として処理し、その他のサービスは「発展的なクラウドサービス」として別途議論するそうです。
なお、「著作権法 第三十条 (私的使用のための複製)」では、
「著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、その使用する者が複製することができる。」
ただし、以下の制限があります。
①デジタル方式の録音・録画機器等を用いて著作物を複製する場合には、著作権者に対し補償金の支払いが必要。
②コピープロテクション等技術的保護手段の回避装置などを使って行う複製については、私的複製でも著作権者の許諾が必要。
③私的使用目的の複製であっても、違法著作物であることを知りながら音楽又は映像をインターネット上からダウンロードする行為は、権利制限の対象から除外される。
なお、オンラインストレージの共有機能を悪用した事件が発生し、逮捕されています。
著作権侵害の最新監視システムで初の逮捕者、香港在住の「bitshare」ユーザー
-INTERNET Watch
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20141009_670647.html
オンラインストレージ「bitshare」を悪用して、大量の著作物を権利者に無断で公開していた香港在住の40歳の男性が、香港税関に逮捕されたそうです。
このように、オンラインストレージの共有機能を悪用し、他人の著作物を無断で公開することは、当然の事として、著作権者の権利を侵害し、法律違反になります。
しかしながら、自分が購入したCDなどの音楽をMP3のようなデータに変換しパソコンに保存、そのバックアップとして、音楽データをオンラインストレージに保存する(当然ながら共有はしない)ことは、「私的使用のための複製」に該当し、また、私的使用の制限にも該当しておらず、私的使用が妥当だと考えますが・・・問題は単純ではないですね。
この場合、「オンラインストレージに保存した音楽データを絶対に他人と共有しない」ことが前提になり、これをいかに厳密に守れるかが、非常に大事ですね。
代表的なオンラインストレージ、Dropbox、Googleドライブ、OneDriveなどは、保存したデータを”他人と共有する”設定が個人で簡単に設定できます。逆にいうと、この”共有する”ことが、オンラインストレージの一つのメリットにもなっています。
なお、オンラインストレージを私的複製の範囲内として利用する一つの方法として、今後、以下のようにしたら良いかもしれません。
①オンラインストレージで、”私的使用エリア”、”共有エリア”を事前に決め、
②”共有エリア”に入れたデータのみ他人とデータを共有できようにすると共に、
③個人で勝手に”共有設定”できない
いずれにしても、この問題、今後、さらに検討されるべき問題ですね。
なお、「オンラインストレージの中に、音楽CDなどの他人のデータを複製して保存し、それを共有設定すること」は、絶対に実施してはいけません。
もし、実施した場合、著作権の複製権を侵害すると共に、公衆送信権(送信可能化権)を侵害することになります。