外国の記事で参考になるような記事がありますね。このような記事を翻訳して利用しても良いのでしょうか? 今回は、翻訳に絡む内容をQ&Aで整理してみました。
私も外国のインターネットの記事や本の内容を訳して、ブログやホームページに掲載しようとした時、なんども悩んだ内容です。
今回、著作権法を細かく確認し、権威のある情報をもとに、Q&Aを作成しましたが、何かあればご指摘ください。
なお、今回のQ&Aにある「翻案」とは、「元の著作物の特徴を活かしつつ、別の表現形態に変えたり、原作の一部を変更して別の作品を創作する」ことで、”文章を要約することも翻案”に該当します。
なお、翻訳して利用する場合に注意すべきことを以下の補足に整理しましたので、参考にしてください。
《補足1》適法な「引用」となるための要件
《補足2》翻訳及び翻案(要約)しての引用は可能か?”
また、今回の問題、なかなかやっかいなので、文化庁(参考情報1)と日本弁理士会(参考情報2)の内容を参考に致しました。
問題1: 高校の試験問題に掲載するために、フランス語で書かれた哲学者の言葉を日本語に翻訳する行為・・・さて違法でしょうか?
問題2: 中学の教科書に掲載するために、英語で書かれた本の内容を日本語に翻訳する行為・・・さて違法でしょうか?
問題3: 日本語の音楽の歌詞を外国語に訳してブログに公開する行為(外国語の音楽の歌詞を日本語に訳す場合も同じ)・・・さて違法でしょうか?
問題4: 外国のホームページの記事が自分のブログに関係することだったので、参考として、記事の一部を引用し訳した内容を、ブログに掲載する行為・・・さて違法でしょうか?
問題5: ホームページを補足する内容が、英字新聞にあったので、記事を要約した内容を自分のホームページに掲載する行為・・・さて違法でしょうか?
問題1は〇、違法ではありません。 著作権法 第36条で「入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、問題として複製を行うことができる」として、試験問題として複製は認めれており、第43条2号で翻訳についても認められています。
問題2は〇、違法ではありません。 高校の教科書に掲載する目的であれば、公表された他人の著作物の自由利用が認められ、この場合、翻訳して掲載することもできます。ただし、その旨を著作者に通知する共に、補償金を著作権者に支払う必要があります。
問題3は×、違法です。 著作権者は、著作物を翻訳等する権利を持っています(著作権法 27条)。日本語の音楽の歌詞を勝手に外国語に訳すことは、著作権者の翻訳権を侵害します。
問題4は〇、違法ではありません。 著作権法 第32条で「公表された著作物は、目的上正当な範囲内で引用して利用することができる。」とされ、第43条2号で翻訳についても認められています。但し、「引用」となるための要件を守って、正しく引用することが必要です。
問題5は×、違法です。 著作権法 第32条で引用での複製は認められていますが、第43条(翻訳・翻案等による利用)では、引用の場合、翻訳は認められていますが、要約などの翻案は認められていません。そのため違法になります。
《解説》
翻訳、翻案等による利用については第43条に細かく規定されています。
■”教科書に掲載する”場合:教科用図書(小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校その他これらに準ずる学校)
第43条1号で翻訳又は翻案が利用可能な条項が規定されていますが、その中に第33条1項”教科用図書等への掲載”があるので、”教科書に掲載する”場合は翻訳又は翻案(要約)して利用できます。ただし、その旨を著作者に通知する共に、補償金を著作権者に支払う必要があります。
■”引用”、”試験問題”に利用する場合:
第43条2号で翻訳が利用可能な条項が規定されていますが、その中に、第32条”引用”、第36条”試験問題”があるので、”引用”、”試験問題”には、翻訳して利用できます。但し、両方共に、内容を要約する翻案はできませんので注意ください。
(翻訳、翻案等による利用)
第43条 次の各号に掲げる規定により著作物を利用することができる場合には、当該各号に掲げる方法により、当請著作物を当該各号に掲げる規定に従つて利用することができる。
1.第30条第1項、第33条第1項(同条第4項において準用する場合を含む。)、第34条第1項又は第35条 翻訳、編曲、変形又は翻案
2.第31条第1項第1号若しくは第3項後段、第32条、第36条、第37条第1項若しくは第2項、第39条第1項、第40条第2項、第41条又は第42条 翻訳
3.第33条の2第1項 変形又は翻案
4.第37条第3項 翻訳、変形又は翻案
5.第37条の2 翻訳又は翻案
《補足1》適法な「引用」となるための要件
著作権法上,著作権の制限規定として、著作権法第32条(引用)の要件を満たした場合,著作権者の承諾なく著作物を利用できるとされています。
「公表された著作物は,引用して利用することができる。この場合において,その引用は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」(著作権法第32条)
一般的に、”引用における注意事項”は以下です。
(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
(参照:最判昭和55年3月28日 パロディー事件)
参考情報1:
文化庁 | 著作物が自由に使える場合
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/gaiyou/chosakubutsu_jiyu.html
《補足2》翻訳及び翻案(要約)しての引用は可能か? 翻訳は〇、翻案は×
翻訳、翻案等による利用については、著作権法43条で詳しく規定されています。
引用は、著作権法第32条の引用の条件を満たせば、著作権法43条2号の中で、”翻訳権”は認められています。そのため、引用の要件を満たせば、その著作物を翻訳して利用することができます。
しかし、翻案権(43条1号、3号)の権利には準用されていないため、引用の要件を満たしていたとしても、引用する著作物をアレンジして利用する場合は、権利を侵害します。
参考情報2:
特 集≪著作権実務ガイドライン≫ 著作権の制限- 引用 - 日本弁理士会
https://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/200601/jpaapatent200601_064-066.pdf
《補足3》引用と翻案・翻訳
「引用」の場合には他人の著作物をそのまま改変を加えずに利用するのが原則、翻案にあたる要約を行って利用することはできません。
要約は、著作物の内容をある程度概括できる程度にした著作物のことをいいますが、この要約を行う行為は、一般に翻案権(第27条)が働く行為で、著作権者の了解なしにはできません。
ただし、ごく簡単に内容を紹介する程度の文書であれば、著作権者の了解は必要ないと考えられています。
なお、翻訳も同種の権利(第27条)ですが、引用の場合は翻訳して引用することは自由にできることになっています(第43条第2号)。
翻案引用は微妙です。地方裁ですが立法時想定されていないだけで許される判決がでているので
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