作成:2016.12.28 改訂:2017.1.5
DeNAの医療情報サイト「WELQ」の記事は、2016年11月に、内容の信頼性が薄いとして批判を浴び、結果的には非公開になりましたが、もう1つ、大きな問題として、著作権侵害をうまく回避していた問題がありました。
WELQには、著作権侵害を回避するための、他人のコンテンツのリライト(書き換え)を指南した「マニュアル」があったということです。まとめると以下の問題がありそうです。
問題点1:複数サイトの複数意見を寄せ集め「引用」を回避(複製権侵害の可能性)
問題点2:他人の著作物の内容を勝手に書き換え(翻案権侵害の可能性)
この事件、大企業が著作権侵害を回避しようとした、あってはならない悪質な事件ですね。
私も、いくつかのブログを書いていますが、公開する文書や図などは、何時間(時には何日も)もかけて作成したものであり、自分のコンテンツが勝手に利用されると、やはり許せません。
ましてや、医療情報サイト「WELQ」が利用した健康や医療の記事は、専門家の人が仕事の一環として公開しているものと思われ、著作権で許された範囲(引用)以外で、利用(悪用)されるのは、かなり問題だと思います。
なお、医療情報サイト「WELQ」の事件は、他人のコンテンツを利用する場合に、やってはいけない代表例でもあります。
ホームページ、ブログ、SNSなどで、他人のコンテンツを利用する場合は、下記に述べる”引用時の注意事項”を、ぜひ守ってください。
参考情報①
著作物が自由に使える場合|文化庁
http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html
参考情報② 2016年12月09日
DeNAリライトマニュアルの巧妙すぎる手法 | 「WELQ問題」の本質とは何か
| 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
http://toyokeizai.net/articles/-/148798
参考情報③ 2016年12月19日
DeNA“まとめサイト”問題 “不正”指南マニュアルも……利益優先、質より量追求
- ITmedia ニュース
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1612/19/news054.html
参考情報④ 2016年12月8日
問題案件11万超 DeNA著作物パクリの「ケタ外れ」
| 経済プレミア・トピックス | 編集部 | 毎日新聞「経済プレミア」
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20161208/biz/00m/010/004000c
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■ 他人の文章を利用する場合の”引用時の注意事項”
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他人が作成した文章は、ある条件を守れば、引用し利用することが可能ですが、
「自分のオリジナルの文章が多くを占め、自分の文章の説明や補強として、他人の文章を利用する(引いてくる)」
というのが引用です。以下に、文化庁の参考情報①を参考に、引用時の注意事項を詳しく説明します。
(1) 主従関係
自分の著作が主で、引用される著作が従であること。量的にも質的にも自分の著作が主であることが必要。
(2) 必然性があり最小限度
引用が自分の著作に不可欠であり、かつ必要最小限度の引用であること。
(3) 明瞭区分性
かぎ括弧をつけるなど,「自分の著作物」と「引用部分」とを明確に区別すること。
(4) 出所、著作者名の明記
引用する著作物の書名、著作者名などを明記し、出所が明確に分かること。
例)本からの引用の場合・・・“『書名』著者名、発行所名、発行年、引用ページ”のように記述
ホームページからの引用の場合・・・“ホームページ名(制作者)、URL”を記述する。
(5) 引用部分の同一性保持権(同一性保持権(第20条))
引用する場合に、原文そのままで引用すること。なお、途中を省略する場合は“(中略)”などと明記する。
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■ WELQの「マニュアル」の問題点
■ 複数サイトの複数意見を寄せ集め「引用」を回避(複製権侵害の可能性)
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この医療情報サイト「WELQ」の「マニュアル」の問題点を、東洋経済オンラインの参考情報②をもとに考えてみたいと思います。
この記事によると、マニュアルには、『中見出しごとに複数サイトを参考にして複数意見を寄せ集めれば、どこを参考にしたかすぐ分かる状態ではなくなり、独自性の高い記事になる』(参考情報②より)という、記事作成のコツがあったとのこと。
しかし、これは、著作権で認められている、他人のコンテンツ利用する場合の「引用」には当てはまらず、著作権侵害に近い内容です。
参考情報①の文化庁のサイトには、著作物が自由に使える場合の「引用における注意事項」として、引用を行う場合には、”他人の著作物を引用する必然性があること”とあります。
つまり、自分の著作物を補助する目的で、他人の著作物を利用するのが「引用」であり、他人の著作物を寄せ集めた場合は「引用」に該当しないと思います。
あくまでも、「自分の著作が主で、引用される著作が従であること」が重要であり、他人の著作物を単に寄せ集め、文言を変えただけでは、引用に該当せず、著作者の複製権を侵害する可能性が高くなります。
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■ WELQの「マニュアル」の問題点
■ 他人の著作物の内容を勝手に書き換え(翻案権侵害の可能性)
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ITmedia ニュースの参考情報②には、他人の記事を利用したのを隠すために、言葉の書き換えを勧めた、WELQのマニュアルの内容が記載されています。
他のサイトから文章を利用するコツとして、『実際に「身なりが不潔」を「清潔感がない格好」と“修正”する-といった具体例など、引用の事実を分かりづらくするための手法が事細かに記載されていた。』(参考情報③より)
ここで問題になるのは、著作物を翻訳、編曲、変形、脚色等をする権利である「翻案権」を侵害する可能性があるということです(著作権法27条)。
つまり、もとの記事を勝手に変形して利用すると「翻案権」を侵害します。なお、翻案権の中には、文章を ”要約すること” も該当します。
なお、「要約」といっても、それが「単なる事実」であれば、著作物性はないとされています。したがって、元記事から事実部分だけを抽出して利用した場合には、著作権侵害にはなりません。
更に、複製権は著作物を複製(コピー)する権利ですが、完全に同一である場合のみならず、実質的同一である場合も該当しますので、内容によっては、複製権も侵害する可能性もあります。
WELQのマニュアルの内容は、うまく著作権を回避したように見えますが、実は、著作権侵害ギリギリで、大変問題があったと言わざるをえません。
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