ブログでの発信

著作権は敷居が高いですが、インターネットで情報発信をするかぎり、この「著作権」を無視することはできません。 このブログでは、この著作権について、私が経験したこと、学んだことを、身近な事例で紹介していきたいと思います。

2016年12月28日水曜日

著作権侵害を回避しようとしていたDeNAの医療情報サイト「WELQ」の手法 やってはいけない代表例

作成:2016.12.28 改訂:2017.1.5

DeNAの医療情報サイト「WELQ」の記事は、2016年11月に、内容の信頼性が薄いとして批判を浴び、結果的には非公開になりましたが、もう1つ、大きな問題として、著作権侵害をうまく回避していた問題がありました。

WELQには、著作権侵害を回避するための、他人のコンテンツのリライト(書き換え)を指南した「マニュアル」があったということです。まとめると以下の問題がありそうです。

 問題点1:複数サイトの複数意見を寄せ集め「引用」を回避(複製権侵害の可能性)
  

問題点2:他人の著作物の内容を勝手に書き換え(翻案権侵害の可能性)

 

この事件、大企業が著作権侵害を回避しようとした、あってはならない悪質な事件ですね。

私も、いくつかのブログを書いていますが、公開する文書や図などは、何時間(時には何日も)もかけて作成したものであり、自分のコンテンツが勝手に利用されると、やはり許せません。

ましてや、医療情報サイト「WELQ」が利用した健康や医療の記事は、専門家の人が仕事の一環として公開しているものと思われ、著作権で許された範囲(引用)以外で、利用(悪用)されるのは、かなり問題だと思います。

なお、医療情報サイト「WELQ」の事件は、他人のコンテンツを利用する場合に、やってはいけない代表例でもあります。

ホームページ、ブログ、SNSなどで、他人のコンテンツを利用する場合は、下記に述べる”引用時の注意事項”を、ぜひ守ってください。



 参考情報①
 著作物が自由に使える場合|文化庁
 http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

 参考情報② 2016年12月09日
 DeNAリライトマニュアルの巧妙すぎる手法 | 「WELQ問題」の本質とは何か
  | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
 http://toyokeizai.net/articles/-/148798

 参考情報③ 2016年12月19日
 DeNA“まとめサイト”問題 “不正”指南マニュアルも……利益優先、質より量追求
 - ITmedia ニュース
 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1612/19/news054.html

 参考情報④ 2016年12月8日
 問題案件11万超 DeNA著作物パクリの「ケタ外れ」
  | 経済プレミア・トピックス | 編集部 | 毎日新聞「経済プレミア」
 http://mainichi.jp/premier/business/articles/20161208/biz/00m/010/004000c




■ 他人の文章を利用する場合の”引用時の注意事項”


他人が作成した文章は、ある条件を守れば、引用し利用することが可能ですが、

「自分のオリジナルの文章が多くを占め、自分の文章の説明や補強として、他人の文章を利用する(引いてくる)」

というのが引用です。以下に、文化庁の参考情報①を参考に、引用時の注意事項を詳しく説明します。


(1) 主従関係
 

自分の著作が主で、引用される著作が従であること。量的にも質的にも自分の著作が主であることが必要。

(2) 必然性があり最小限度
 

引用が自分の著作に不可欠であり、かつ必要最小限度の引用であること。

(3) 明瞭区分性
 

かぎ括弧をつけるなど,「自分の著作物」と「引用部分」とを明確に区別すること。

(4) 出所、著作者名の明記
 

引用する著作物の書名、著作者名などを明記し、出所が明確に分かること。

例)本からの引用の場合・・・“『書名』著者名、発行所名、発行年、引用ページ”のように記述
ホームページからの引用の場合・・・“ホームページ名(制作者)、URL”を記述する。

(5) 引用部分の同一性保持権(同一性保持権(第20条))

引用する場合に、原文そのままで引用すること。なお、途中を省略する場合は“(中略)”などと明記する。


■ WELQの「マニュアル」の問題点
■ 複数サイトの複数意見を寄せ集め「引用」を回避(複製権侵害の可能性)


この医療情報サイト「WELQ」の「マニュアル」の問題点を、東洋経済オンラインの参考情報②をもとに考えてみたいと思います。

この記事によると、マニュアルには、『中見出しごとに複数サイトを参考にして複数意見を寄せ集めれば、どこを参考にしたかすぐ分かる状態ではなくなり、独自性の高い記事になる』(参考情報②より)という、記事作成のコツがあったとのこと。

しかし、これは、著作権で認められている、他人のコンテンツ利用する場合の「引用」には当てはまらず、著作権侵害に近い内容です。


参考情報①の文化庁のサイトには、著作物が自由に使える場合の「引用における注意事項」として、引用を行う場合には、”他人の著作物を引用する必然性があること”とあります。

つまり、自分の著作物を補助する目的で、他人の著作物を利用するのが「引用」であり、他人の著作物を寄せ集めた場合は「引用」に該当しないと思います。

あくまでも、「自分の著作が主で、引用される著作が従であること」が重要であり、他人の著作物を単に寄せ集め、文言を変えただけでは、引用に該当せず、著作者の複製権を侵害する可能性が高くなります。



■ WELQの「マニュアル」の問題点
■ 他人の著作物の内容を勝手に書き換え(翻案権侵害の可能性)



ITmedia ニュースの参考情報②には、他人の記事を利用したのを隠すために、言葉の書き換えを勧めた、WELQのマニュアルの内容が記載されています。

他のサイトから文章を利用するコツとして、『実際に「身なりが不潔」を「清潔感がない格好」と“修正”する-といった具体例など、引用の事実を分かりづらくするための手法が事細かに記載されていた。』(参考情報③より)



ここで問題になるのは、著作物を翻訳、編曲、変形、脚色等をする権利である「翻案権」を侵害する可能性があるということです(著作権法27条)。

つまり、もとの記事を勝手に変形して利用すると「翻案権」を侵害します。なお、翻案権の中には、文章を ”要約すること” も該当します。

なお、「要約」といっても、それが「単なる事実」であれば、著作物性はないとされています。したがって、元記事から事実部分だけを抽出して利用した場合には、著作権侵害にはなりません。

更に、複製権は著作物を複製(コピー)する権利ですが、完全に同一である場合のみならず、実質的同一である場合も該当しますので、内容によっては、複製権も侵害する可能性もあります。

WELQのマニュアルの内容は、うまく著作権を回避したように見えますが、実は、著作権侵害ギリギリで、大変問題があったと言わざるをえません。

2016年11月27日日曜日

書籍・新聞などを電子化(PDF化、デジカメ写真など)して利用すると著作権侵害にも

書籍・新聞などをコピー(印刷)したものを、個人で利用するのは著作権上は問題ありませんが、会社などで利用すると著作権侵害になります。

さて、それでは、PDF化したり、デジカメ写真で撮ったものを利用する場合は、どうなるのでしょうか?

実は、これもコピーと同様な考え方で、個人で利用するのはOKで、会社などで利用するのは著作権侵害になりますので、注意が必要です。

 
良い資料が見つかったからと、書籍・新聞などを簡単にPDF化したり写真に撮って、会社で利用すると著作権違反になりますので十分注意ください。

もし、著作権法違反の場合、「最高で懲役10年又は1000万円以下の罰金、あるにはその両方」で、窃盗罪と同じ重さの刑罰になっています。

また、著作権には「両罰規定」があり、法人の代表者、従業員等が著作権侵害行為をしたときは、行為者のほか、当該法人も3億円以下の罰金に処せられます。


なお、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」であれば、他人が作成したものを勝手にコピーしたり利用可能です。

ただし、インターネット上に違法に公開されている有償の音楽・映像を、録音・録画することは、個人的に利用する場合でも、著作権で禁じられていますので注意下さい。

また、ブログやホームページなどで、個人的にインターネットに公開する場合は、”私的使用の範囲”を越え、”公の場”となるので、他人が作成した文章・画像などを勝手にコピーして利用することはできません。



■ コピーする権利「複製権」は著作権の基本的な権利


「複製権」は、手書、印刷、写真撮影、複写、録音、録画、パソコンやサーバーへの蓄積など、どのような方法であれ、著作物を「形のある物に再製する」(コピーする) ことに関する権利です。

このコピーする権利「複製権」は、作成した人(著作権者)が持っており、最も基本的な権利です。「複製権」には、「生のもの(講演など)」を録音・録画・筆記するようなことも含まれます。



[著作権法における複製権とは]

第2条1項15号 複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること(以下略)

第21条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

第63条 著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。



■ 複製の具体例


以下のような行為が複製にあたります。様々な行為が複製に該当しますので注意下さい。

・コピー機によるコピー
・プリントアウト(印刷)
・スキャナーを用いて記事や画像のPCへの取り込み
・ハードディスクドライブへの保存
・CDやDVDのダビング・リッピング
・アップロード、ダウンロード
・MPEGからファイル形式の変換
・MIDI化
・手書きによる模写
・転載
・講演、ショー、コンサート、テレビ番組などの録音・録画



■ 著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できる場合


著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できる場合として主に以下があります(他にも様々ありますが)。

・私的使用のための複製(第30条)
・学校における複製など(第35条)



(1) 私的使用のための複製(第30条)

著作権法には、「私的使用の範囲ならば利用可能」という原則があり、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」であれば、他人が作成したものを勝手にコピーしたり利用可能です。

(2) 学校における複製など(第35条)

学校において、授業で使うことを目的とする場合、教育を担任する人及び授業を受ける人が必要と認められる限度で著作物を複製することが認められています。

しかし、例えば、学校向けのワークブックやドリルなどは、それを複製して授業で使用することは、著作権者の利益を不当に害するので違法です。


詳しくは、以下を参照下さい。

著作物が自由に使える場合|文化庁
http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html



2016年10月30日日曜日

撮った写真をネットに投稿すると、肖像権・パブリシティー権を侵害する可能性も

10代に人気の「プリ画像」というサービスに、芸能人の写真が多数投稿されており、”「著作権」「肖像権」がわからない子どもたち”という記事が以下にありました。

 アプリ「プリ画像」に見る10代の著作権意識と危険性 - CNET Japan
 http://japan.cnet.com/sp/smartphone_native/35091252/


でも、この問題、子どもたちだけでなく、大人にも言えます。果たして、親や教師のどれぐらいの人が、肖像権・パブリシティー権を理解しているのでしょうか? まあ、こういう私も、以前は、自分が撮った写真を、何も考えずに公開していましたが・・・

自分が撮った写真だから公開しても問題がない?

確かに、自分が撮った写真を公開しているので、著作権上は問題ありません。

でも、写真を勝手に、インターネットに公開された方は、困ります。それが”肖像権(しょうぞうけん)”と”パブリシティー権”です。

他人が写った写真や、有名人が写った写真を勝手に公開すると、この肖像権やパブリシティー権を侵害することになります。著作権法で規定されていませんが、この言葉は、著作権の関係でよく出てくる言葉です。

「人は私生活上の容姿を無断で撮影されたり、写真を勝手に公表されない権利を持っている」

として、判例上も古くから認められているものです。

 肖像権(しょうぞうけん)
 ・・・無断で撮影させない、撮影された写真を勝手に公表させない権利

 パブリシティー権
 ・・・著名人の写真や氏名は経済的価値があり勝手に利用させない権利

私はデジカメで花の写真を撮るのが好きですが、花の写真を撮るときに「写真の中に出来るだけ他の人が写らない」ように気をつけています。ただし、他人が写った写真でも、人物の特定ができない場合などは公開してもOKです。

実は、以前、私が公開した写真に、他人がはっきり分かる写真があり、後から削除したこともありました。

なお、パレード、祭り、政治家の演説、その他イベントなど公の場所での公の行動を撮影した場合は、明らかに公開されるとわかった上で相手が写っている場合にあたり、肖像権の侵害になりません。

自分の写真を公開する際に、”肖像権”と”パブリシティー権”を考慮するには、相手のプライバシーを侵害していないか、また、相手の利益を不当に侵害しないかを考えると良いですね。



■ 肖像権(しょうぞうけん)


「肖像権」というのは誰でも持っている権利で、むやみに自分の写真を公表されて、嫌な思いをしないための権利です。

各個人は、人格的権利の一貫として、自分の顔写真や肖像画(似顔絵も含む)は、自分の知らないところで勝手に使われないようにする権利を持っているということです。

従って、他人を映した写真をホームページ等に掲載する場合には、映っている本人の許諾が必要です。


街を歩いている人を撮影した場合も、その人の許可なく勝手に写真を掲載できません。

親しい友人であっても、本人の了解をとるのがエチケットです。この肖像権は、どこの法律にも出てきませんが、著作権法上の問題として良く議論されます。



■ パブリシティ権


タレント等の有名人の場合、顔写真や名前を使って利益を得ることができるので、肖像権以外に氏名・肖像を利用する権利、パブリシティ権というものがあります。

パブリシティ権は、有名人の氏名・肖像は、コマーシャル等に利用することで経済的な利益を上げることができるので、それを保護しようというものです。


そのため、有名人の写真を無断でホームページ・ブログ・SNS等に使用することは、パブリシティ権の侵害となるので、基本的に有名人の写真は載せてはいけません。



■ 他人が写った写真でも肖像権の侵害にならないケース

パレード、祭り、政治家の演説、その他イベントなど公の場所での公の行動を撮影した場合は、明らかに公開されるとわかった上で相手が写っている場合にあたり、肖像権の侵害になりません。

ただし、パレード、祭りで、たまたま見かけた友人や芸能人の写真を、”こんな人がいた!”といって公開すると、公開されるとわかっていないので、プライバシーの問題もあり、肖像権・パブリシティ権の侵害になる可能性が高いので注意が必要です。

なお、以下の場合も、肖像権の侵害になりません。

①被写体の同意がある
②人物の特定ができない
③被写体の社会生活のマイナス要因にならない

詳しくは以下を参照下さい。

参考:肖像権の侵害になるケースとならないケース | リモートワーク - anywher
https://anywher.net/2015/10/shouzou/

2016年10月14日金曜日

著作権表示 Copyright(コピーライト)は必要なの? 正しい書き方とは?

本やホームページなどでよく見る「(c) **** 2016」の表示は、著作権表示と言われていますが、厳密には、実は必要はありません。

かつて、一部の国では、著作権表示がないと、その瞬間に著作権フリーになるということがありました。

ただし、著作権にはベルヌ条約があり、これに加盟している国では、著作権表示が無くても、著作物を創作すれば、著作権が守られます。


以前はアメリカも加盟していませんでしたが、1989年に加盟したので、ベルヌ条約にはほとんどの国が加盟しており、著作権表示が無くても、著作権は保護されます。

しかし、時間をかけて作成した著作物を公開するときなど、勝手に利用されないか、不安になりますね。

そのため、「この作品には著作権があり、作成したのはいつで、私が著作権者です」という、著作権表示が付けられています。


著作権表示の正しい書き方
 

  必要な3つの要素(名前と発行年度の順番は逆でもOK)


 「©のマーク 著作権者の名前 作品の発行年度」


 ① ©はCopyright(コピーライト)で「著作権」という意味
   なお、”(c)”でもOKです
  
 ② 著作権を持っている著作権者の名前 (制作者ではありません)
   ただし、通常、制作者=著作権者
 
 ③ 最初の発行年 (更新の年号はあってもなくてもOK)
   著作権は制作時の年が重要



私も、最近は、ブログで公開する画像には、必ず「© 一灯 2016」または、「© 2016 一灯」と右下に追加しています。



参考文献:

「著作権とは何か―文化と創造のゆくえ (集英社新書)」(福井 健策 著)


2016年7月2日土曜日

店舗で「BGM」として、購入CDの音楽やインターネットの音楽を流すのは法律違反

店舗で「BGM」を流す際には、著作権法を知らないと法律違反になり、罰せられるので注意が必要です。
音楽の著作権者には、音楽を公衆に聞かせることを目的として演奏する権利(「演奏権」)があります。

店舗でBGMを流す行為は、音楽を客に聞かせることを目的としていますから、著作権法の演奏にあたり、この「演奏権」を侵害します。なお、演奏には、生演奏だけでなく、CDの音楽を流すように、録音されたものを再生することも含まれます(著作権法2条7項)。

また、インターネットラジオなどのインターネットの音楽には、著作権法上、「自動公衆送信」という権利(オンデマンドの送信)があり、インターネットの音楽を店舗で流すのも著作権法違反になります。



著作権法上、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する」のは、「私的使用」になりCD・インターネットの音楽の利用はOKですが、店舗で「BGM」として音楽を流すのは、著作権法の各種権利を侵害することになり、法律違反になります。


①購入したCDを再生して、店舗でBGMとして流すのは著作権違反(「演奏権」の侵害)

②インターネットラジオなどのインターネットの音楽をパソコンなどで再生し店舗でBGMとして流すのは著作権違反(「自動公衆送信」の侵害)


但し、著作権法38条3項に例外措置があり、以下の場合はOKです。

①FMやAMなどラジオ放送をBGMとして「通常の家庭用受信装置」をもちいて流す場合はOKです。

②TVも「通常の家庭用受信装置」をもちいて流す場合はOKです。


また、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができます。


(補足)著作権法38条3項

「放送され、又は有線放送される著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達することができる。通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする。」

この内容から、以下の場合は、著作権を侵害しません。

 (1) 営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合
 (2) 通常の家庭用受信装置を用いてする場合(営利目的であっても。料金を受けても。)



詳しくは、以下を参照下さい。

 著作物等の「例外的な無断利用」ができる場合 文化庁
  「非営利・無料」の場合の「上演」「演奏」「上映」「口述」「貸与」等関係
 http://chosakuken.bunka.go.jp/naruhodo/outline/8.g.html


なお、下記の記事によると、日本音楽著作権協会(JASRAC)は6月上旬、不正にBGMを利用している全国187事業者、212店舗に対して、簡易裁判所に民事調停を申し立てたそうです。

 JASRACが美容室を中心に一斉「法的措置」…店舗で「BGM」を流す際の注意点
  - 弁護士ドットコム
 https://www.bengo4.com/internet/n_4829/

2016年4月2日土曜日

CDをBGMに使うと著作権侵害になるので注意が必要 *例外もあり

購入したCDや、レンタルショップで借りてきたレンタルCDを、BGMとして店舗で流すのは、著作権使用料を支払わないと違法になるので注意が必要です。

BGMとして音楽を流す場合、著作権者が持っている「上演権・演奏権」を侵害することになるからです(著作権法 第22条 上演権及び演奏権)。

著作権者は自分が作った音楽を演奏する権利を持っており、著作権者以外の者が勝手に音楽を流すこと(これも演奏にあたります)は、著作権の侵害となります。

なお、著作権法 第38条で、営利を目的とせず、聴衆又は観衆から料金を受けない場合は、音楽を著作権者の許諾なしで公に上演・演奏することができる、という例外が認められてはいます(実演家の報酬もダメ)。

ただし、店舗という、営利を目的とした場所でのBGMは、認められず著作権侵害になります。


個々の著作権者にその都度上演・演奏の許諾を得るのは煩雑で、通常はJASRAC(日本音楽著作権協会)などの著作権管理団体に著作権使用料を支払い、許諾を得ることになります。

詳しくは、以下を参照下さい。JASRACの規定によると、店舗の面積によって価格が変わり、店舗面積が500平方メートルまでは年額6千円です。

 各種施設でのBGM JASRAC
 http://www.jasrac.or.jp/info/bgm/



■JASRACの管理楽曲をBGMとして流す場合の例外(手続き不要で利用可能)

上記のJASRACのサイトによると、以下は手続き不要でBGMとして利用可能になっています。詳しくは、上記サイトを参照下さい。

①有線音楽放送など、BGMの音源提供事業者から音源の提供を受けている場合

②カラオケや生演奏等で既にJASRACと契約している

③テレビやラジオの放送をそのまま流している

ただし、インターネットラジオは原則として手続きが必要。また、放送を録音・録画して流す場合や、特別な音響設備を利用する場合は手続きが必要です。

④教育機関での利用(※)

⑤福祉・医療施設での利用(※)

⑥事務所・工場等での主として従業員のみを対象とした利用(※)

⑦露店等での短時間で軽微な利用(※)


※ 営利を目的としていても、当分の間、使用料を免除。


(注)「教育機関」の範囲
文部科学省が教育機関として定めるところ、およびこれに準ずるところとなっています。

具体例:
幼稚園・保育園・小中高校・中等教育学校、短期大学、大学、大学院、大学校、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校、専修学校、看護学校など(構造改革特別区域法の定めにより設置される教育機関も含みます。)

2016年2月17日水曜日

レシピのネット転載は著作権上はOKだが「モラルの問題」有り、ただし料理の写真の転載は著作権違反!

アイディアは著作権では保護されません。代表的な例が料理のレシピです。

料理の調理法は材料や手順をまとめただけであって、著作権の保護の要件である「作者の思想又は感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」には該当しません。

そのため、料理のレシピを自分のブログなどに転載するのは著作権上はOKで問題ありません。

ただし、レシピに添えられた料理の写真は、無断で転載すると著作権侵害になるので注意が必要です。

なお苦労して考えたレシピーを、あたかも自分が考えたように勝手に公開されると、気持ちが良いものではありませんし、モラルの問題もあります。また、著作権以外に、特許法、商標法、不正競争防止法を侵害する可能性もあるので、注意が必要です(補足1)。

(注)著作権法では、著作物を「思想・感情を創作的に表現したもの」と定義しています。料理のアイデア自体には適用されず、文章で表現したとしても「○分煮る」「焦がさないよう焼く」などの一般的な説明文は、創作性が認められません。


■レシピのネット転載は「モラルの問題」

レシピのネット転載、料理研究家ら困惑 「モラルの問題」 | どうしんウェブ/電子版(暮らし・話題)
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/life-topic/life-topic/1-0234430.html


上記の記事によると、料理教室などで教えたレシピが不特定多数に公開されることに、料理研究家らの間では困惑が広がっているそうです。

レシピは著作権保護の対象にならないケースが多いものの、「許可なく転載するモラルの無さが問題」との指摘も出ているとのこと。


確かに、著作権上、問題がないからと言って、料理教室のレシピを無断でブログなどで紹介し、あたかも自分が考えたレシピのように掲載されると、困ったことになりますね。

ネット上に自分のレシピが公開されたことがある函館の料理研究家は、料理教室の生徒に「ネットに掲載しないで」と要請、レシピを書いた紙にも「無断転載不可」と記すなどの対策を実施しているそうです。

少なくとも、料理教室などのレシピーを掲載する場合は、「載せてもいいですか?」と許可をもらうことが必要ですね。

また、レシピをブログに掲載した場合、「これは・・・料理教室で学んだレシピで、とても美味しいです。ここの料理教室は素晴らしい!」などと宣伝してあげるのも良いですね。

なお、料理本などの編集物の内容や、レシピに添えられた料理の写真は、無断で転載すると著作権侵害になるので、十分注意下さい!




《補足1》レシピーは著作権以外の知的財産権でも保護されている可能性があります!

料理のレシピを「発明」として特許庁に登録している場合には、勝手にこれを使うと特許権侵害となる可能性があります。

さらに、創作料理のメニューなどを商標登録している場合は、これを勝手に使うと商標権侵害とされる可能性もあります。

さらに、公開されていないレシピを「営業秘密」としているケースでは、これを不正取得や不正持ち出しで使うようなことがあれば、不正競争防止法に違反する可能性も出てきます。

このように、著作権以外の知的財産権で保護されているので、注意が必要です。

参考:
料理レシピに「著作権」なかった 「創作料理」も法的に守れない? - BIGLOBEニュース
http://news.biglobe.ne.jp/domestic/0220/jc_160220_4630092789.html


《補足2》何故、アイデアは著作権では保護されないのか?

良いアイデアならば独占させる代わりに共有させ、そのアイディアで素晴らしい作品が誕生することに期待し、その代わり、生まれた具体的な作品を真似ることは禁止しようというのが、今の著作権のバランスです。

そして、ほとんど世界中の著作権法がこの同じバランスを採用しています。そのため、料理レシピなどのアイデアは、真似ても著作権侵害ではありません。

ただし、せっかく苦労して考えられた料理レシピを無断で活用する場合(特に商用の場合)、モラルの問題は発生すると考えますので、出来るだけ、相手に「利用の許可」をもらう必要があると思います。

2016年1月29日金曜日

歌詞もりっぱな著作物です ブログなどで歌詞を転載するのは著作権違反

音楽の歌詞、短いから、そのまま丸ごと利用(転載)しても問題ないように思えます。しかし・・・通常、これは著作権違反になります。

転載とは、語義のとおり、他人の著作物をそのまま丸ごと利用してしまうことです。著作権法上の「複製」(著作権法 2条1項15号)に当たり、人の文章や歌詞などを勝手にそのまま丸ごと利用(転載)し、ブログなどで公開すると、著作権違反になります。


引用は、他人の著作物について全部又は一部を利用することを言い、例えば自分の文章を補強するために他人の文章を利用することで(自分の文章が主体)、法律に定められた要件を満たしていれば、著作権者の了解なしに引用することができます(著作権法 第32条)。


下記の”ねとらぼ”の記事によると、ブログサービス「はてなダイアリー」で、楽曲の歌詞(著作物)の無断転載を行っているケースが多数あるとして、運営元のはてなが対象ユーザーに削除依頼を行うと告知しています。

「はてなダイアリー」で“楽曲の歌詞”の無断転載に削除依頼 回答しないと公開停止
 - ねとらぼ
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1601/08/news156.html

なお、「アメーバブログ」「Yahoo!ブログ」「ライブドアブログ」などは運営元がJASRACと利用許諾契約を結んでいるため、管理楽曲の歌詞掲載が可能です。詳しくは、上記の”ねとらぼ”の記事を参照下さい。

但し、JASRACの管理楽曲には、どのようなものがあるかは、以下のデータベースで確認することが必要です。

    JASRAC 作品データベース検索サービス
    http://www2.jasrac.or.jp/eJwid/


《補足》引用の条件 (著作権法 第32条 他)

他人が作成した著作物は、以下の条件を守れば、引用し利用することが可能です。

(1) 主従関係
自分の著作が主で、引用される著作が従であること。量的にも質的にも自分の著作が主であること。

(2) 必然性があり最小限度
引用が自分の著作に不可欠であり、かつ必要最小限度の引用であること。

(3) 明瞭区分性
かぎ括弧をつけるなど,「自分の著作物」と「引用部分」とを明確に区別すること。

(4) 出所、著作者名の明記
引用する著作物の書名、著作者名などを明記し、出所が明確に分かること。ホームページからの引用の場合は、“ホームページ名(制作者)、URL”を記述する。

(5) 引用部分の同一性保持権
引用する場合に、原文そのままで引用すること。なお、途中を省略する場合は“(中略)”などと明記する。