コピーをする権利(複製権)などは”著作財産権”と言われ、著作者の財産的な利益を保護する権利です。
なお、もう一つ大事な権利に”著作者人格権”という、著作者の人格的な利益を保護する権利があります。
なかなかわかりづらい”著作者人格権”ですが、次の権利が与えられています。
①公表権 ・・・公表する権利・その作品自体を公表するかどうかの決定が行える権利
②氏名表示権・・・名前を表示する、又は表示しないの決定が行える権利
③同一性保持権・・・著作物の内容及びその題号(書名)の同一性を保持する権利
このなかで、他人が作成した文書や画像などを利用するときに、特に気をつける必要があるのが、”同一性保持権”です。これは、”作成したものは勝手に変更させない”という権利です。「著作者が社会から作品のありのままを見てもらい評価を受ける権利」とも言えます。
以下に日常の事例をあげて、どのような場合に、この”同一性保持権”を侵害するのか考えてみます。
(同一性保持権)
「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」(著作権法 第20条)
問題1: 雑誌の紙面の都合で、著作者の意思に反して、出版社が作家の原稿を勝手にカットする行為・・・さて違法でしょうか?
問題2: 小説を教科書に掲載するにあたり、小説の著作者の同意なく難しい漢字をひらがなに変更する行為・・・さて違法でしょうか?
問題3: 小説のタイトルを小説の作者(著作者)の同意なく改変する行為・・・さて違法でしょうか?
問題4: パソコンにインストールされたプログラムを著作者に無断で、効率よく機能するように改変する行為・・・さて違法でしょうか?
問題5: インターネットにフリー画像とあり、自分のホームページの構成に合わせ画像のサイズを変更する行為・・・さて違法でしょうか?
問題1は×、違法です。
紙面の都合上とはいえ、著作者の許可なく、出版社が勝手に原稿をカットする行為は、著作者の同一性保持権を侵害します。
問題2は〇、違法ではありません。
学校教育の目的上やむを得ないと認められるものは、同一性保持権の適用を受けない(著作権法 20条2項1号)。難しい漢字をひらがなに変更することは、学校教育の目的上やむを得ない用字の変更になるので、同一性保持権を侵害せず、違法にはなりません。
問題3は×、違法です。
小説のタイトルは文章が短く、原則として著作物性が否定されますが、同一性保持権による保護の対象とされていますので、これは違法になります。
問題4は〇、違法ではありません。
「プログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため、又はより効果的に利用し得るようにするために必要な改変」(著作権法 20条2項3号)については、同一性保持権は及ばないので、プログラムを効率よく機能するように改変しても、著作者の同一性保持権を侵害しません。
問題5はOKの場合もありますが、NGの場合もあり、注意が必要です。
画像も勝手に改変(変形など)してはいけないという“同一性保持権”があります。フリーの画像でも、使う前に、利用規定で”利用範囲を必ず確認”しましょう。利用範囲の中に、“画像を変更せずに、そのまま使って下さい”とあれば、画像のサイズを変更したり、画像の一部をカットすることはできません。
(注)引用する場合も、改作と思われるような引用の仕方は著作者の”同一性保持権”の侵害になるので、文章を原文のままで利用するか、文章の一部をカットする場合は、「中略」というような明確な表示をしたほうが良いですね。
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