楽器での演奏、CDの演奏、DVDの上映、物の譲渡・貸与などの、著作物を提示・提供する行為は、以下のようになります。
著作物の提示・・・上演・演奏、上映、公衆送信・伝達、口述、展示
著作物の提供・・・譲渡、貸与、頒布
*「著作権法入門」(島並 良 他 (著)) P129から
今回は、上記の上演・演奏、上映などの、日常生活での行為に絡む、著作権Q&Aを作成してみました。
著作物の提示/提供に関する行為は、「公衆」になされてはじめて著作権侵害となり、「公衆」以外であれば、著作権を侵害しません。
ただし、公衆にたいして実施されても、「営利を目的とせず、無料の場合は、上演、演奏、上映、口述、貸与することができる(著作権を侵害しない)」(著作権法 第38条)とされています。
例えば、結婚披露宴での友人の演奏は、公衆への演奏で著作権を侵害しそうですが、このような場合は通常「営利を目的とせず、無料での演奏」なので、演奏しても著作権を侵害しません。このように、当たり前と思っていることにも、著作権は複雑に絡んでいます。
なお、「公衆」という定義、難しいですね。「著作権法入門」(島並 良 他 (著))によると、公衆の定義は以下になっています。不特定少数、特定多数も”公衆”になるところがミソですね。
公衆以外 = 特定少数
公衆 = 特定少数 以外すべて ①不特定多数 ②不特定少数 ③特定多数
(注)著作権法2条5項には「公衆には、特定かつ多数の者を含むものとする。」とあり、”特定多数”も”公衆”になります。
問題1: 親族80人が集まった席で曲を演奏する行為は、著作権を侵害しない?
問題2: 先着順で数名に著作物の複製物を配布する場合、少人数なので、公衆向けの譲渡に該当せず、著作権を侵害しない?
問題3: ファンクラブ会員対象のサービスとして、会員全員に著作物の複製物をプレゼントする場合、特定の人が対象なので、公衆向けの譲渡には該当せず、著作権を侵害しない?
問題4: 中学生が学芸会の練習のために、教師の前で曲を演奏するのは、著作権を侵害しない?
問題5: 詩の朗読が録音されたCDを無許可でレストランで再生する行為は、著作権を侵害しない?
問題6: 喫茶店のマスターが自分の好きなDVDを、パソコンのディスプレイでお客さんに見せる行為は、著作権を侵害しない?
問題7: 演奏権を侵害するのは生演奏の場合で、CDの音楽を再生した場合には、演奏権を侵害しない?
問題8: 家庭内で見る為に録画しておいたテレビドラマを、非営利・無料で老人ホームで上映する行為は、著作権を侵害しない?
問題9: 学校のホームページで校歌を流す行為は、著作権を侵害しない?
問題1は〇、侵害せず、違法ではありません。
エッ当然、著作権は侵害しないよ! と思われがちです。しかし、親族であっても特定かつ多数の人を対象にしているので、公衆向けの演奏になり違法になりそうです。ただ、このような場合は、「営利を目的とせず、無料の場合」と思われるので、公衆向けの演奏であっても、違法にはなりません。
問題2は×、侵害し、違法です。
少人数であっても先着順という不特定の者を対象にしているので、公衆向けの譲渡に該当し違法です。
問題3は×、侵害し、違法です。
会員であっても特定かつ多数の者を対象としているので、公衆向けの譲渡に該当し違法です。
問題4は〇、侵害せず、違法ではありません。
中学生が練習のために教師(特定かつ少数の人)の前で演じているので、公衆向けの演奏でないため、演奏権を侵害しません。
問題5は×、侵害し、違法です。
上演、演奏、口述には、著作物の上演、演奏、口述で録音又は録画されたものを再生すること(著作権法 2条7項)とあるので、公衆に聞かせる目的で、口述を録音したものを許諾なしで再生する行為は口述権を侵害します。
問題6は×、侵害し、違法です。
上映とは「著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写すること」(著作権法 2条1項17条)なので、パソコン画面で再生することも上映にあたり、公衆に聞かせる目的で、営利での上映なので違法です。
問題7は×、侵害し、違法です。
問題5の解説にあるように、演奏には、著作物の演奏で録音され、又は録画されたものを再生することも含まれます(著作権法 2条7項)。したがって、CDに録音された音楽を再生することは、その音楽の著作物の演奏権を侵害します。
問題8は×、侵害し、違法です。
第38条は演奏や上演などを認める規定であって、複製までは認めていません。私的使用であれば、テレビドラマ(映画の著作物)を自由に複製することができますが、その複製物を公に上映することはできません(著作権法49条1項1号)。
(注)たとえ、複製時に私的使用目的があっても、その後、それ以外の目的で複製物を頒布し、または公衆に提示すると、その頒布・提示の時点で複製を行ったものとみなされます(著作権法49条1項1号)。
問題9は×、侵害し、違法です。
著作者には、無断で公衆に送信されない権利(公衆送信権)があります。非営利・無料・無報酬の演奏は無断でできますが、公衆送信までは認められていません(著作権法2条7項)。従って、もし、ホームページで校歌を流すには著作者の許諾が必要になります。
《参考》著作権法 第38条(営利を目的としない上演等)
第38条第1項
公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。
第38条第4項
公表された著作物(映画の著作物を除く。)は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物の貸与により公衆に提供することができる。
《参考》著作権法 第2条7項
この法律において、「上演」、「演奏」又は「口述」には、著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)及び著作物の上演、演奏又は口述を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く。)を含むものとする。
0 件のコメント:
コメントを投稿